月桃にかける命 環境企画
長崎自動車道、大村インターチェンジ。大村湾を右手に望みながら、福岡から約1時間30分で到着する。インターチェンジから降りて、右折後、佐賀県鹿島市に続く山越えの国道沿いに、その企業はあった。
「有限会社環境企画 大村支店」と表札に書いてある。ただその姿は、多良山地へと続くこのなだらかな丘陵にとけ込んだ、2棟のビニールハウスであった。まわりを見渡せば、かのキリシタン大名大村純忠から続く大村藩統治の名残なのか、丸みのある海の石で組まれた石垣が、畑や人家に数多く見られた。
有限会社環境企画は代表である永田良幸氏の月桃(げっとう)作りへの思いを具現化した会社である。本来であれば沖縄で自生するこの巨大なミョウガとも呼べる植物を、遠く長崎の土地で、ひとり栽培し続けている。平成10年に1100本の株を植えてから約12年、現在はこの2反ほどの小さな畑に、1本2メートル以上の大きさに成長する月桃が実に27000本も栽培されている。
(有限会社環境企画 大村支店 月桃栽培所)
月桃って何
月桃はショウガ科ハナミョウガ属の多年草で、畑に入るとすぐに分かる芳香性を有している。そもそも沖縄の薬用植物または香料として、餅を蒸すときなどの香り付けや腐敗防止用の包装材に、また精油を抗菌・抗カビ・防虫剤に利用されてきた。月桃は、日本だけでなく、熱帯から亜熱帯アジアに分布しているが、我が国においては「天然香料」として、厚生労働省から食品への添加を認められている。主な製品化ニーズは、お茶などの健康食品や、化粧品や医薬品の原料、抗菌・抗カビ・防虫剤及びその機能を持った包材、壁紙などである。
環境企画では、この大村で育てた月桃をちょうど先月に特許登録された技術で製造した「長崎月桃茶」や、人間だけでなくペットのお肌にも優しい「イオン月桃水」などを開発、販売してきた。このほかに注目すべきは、そのイオン月桃水を地元の農協に業務用出荷し、農協が果実向けの抗菌・抗カビ剤として使用していることである。天然香料として食品に添加することを認められた素材であるだけに、抗菌・抗カビの用途にあっても安心して食品に散布・塗布できると考えられる。

(月桃畑と永田良幸社長 原爆被爆者だがその体は健康そのものである)
環境企画と農業
永田氏が月桃栽培に取り組んだきっかけは、1996年2月のNHKのラジオ放送まで遡る。氏は以前より、独自の信念に基づいて、農業における、無農薬栽培と害虫駆除研究に取り組んできた。氏は多くを語らないが、自身の被爆経験を踏まえ、次世代の子ども達へ健康な体を贈るための環境作りを企画しているのだろうと、筆者は考えている。前述のラジオ放送で沖縄の研究者が発表した、月桃がもつ天然の防虫・抗菌・消臭効果に惹かれたのも自然な流れだった。永田氏は大学教授をしていた前述の研究者と共同で事業化をすすめ、この12年を掛けて原料になる月桃を20倍以上に増やし、そして最終商品化までをほとんど1人で手がけてきた。
写真の記事は1998年末に国連環境計画がまとめた残留性有機汚染物質の生産・使用禁止に向けた段階的規制素案である。当時、対象12物質のうち9物質が農薬を主な用途とするものであった。私達やそして次世代を担う子ども達の口に入る農作物の、その栽培が地球を汚染する有害化学物質に頼っていたことが、氏の研究を前に進め、月桃を少しでも広げようとする活動に繋がっていったことは、想像するにかたくない。

(1998年の一連の長崎新聞の記事 永田社長が大切に保管していた)
明日へ向けて 農商工連携
月桃が主に使われている市場は、資金的に大手の介在が必要な薬品等を除けば、健康食品と化粧品市場である。この2つの市場は、近年通信販売の伸びが著しく、筆者が様々な関連業者から聞く限り、莫大な広告宣伝費を費やして参入する市場となっている。この点から考えると、環境企画が自社で開発し、製造を行っている前述の健康茶や肌水は厳しい市場に単独で参入した無謀な挑戦とも思える。いま環境企画は、様々な業者との打合せを繰り返している。内容は、共同での商品開発への取組みである。
筆者が知っているものだけでも、エステサロン店とのゲタ箱抗菌・消臭剤の開発およびハーブティの研究、化粧品会社とのタイアップによるシャンプー・リンスおよび石けんの開発等、枚挙にいとまがない。この他にも、研究中でここに書くことは出来ない事業もあり、たった2反の畑だけで事業をやっている企業とは思えない連携事業の数になっている。
これは、永田氏がただ商いとして月桃を栽培しているのではなく、むしろ次世代の農環境や食環境、そして子ども達の健康を守る一念で事業を続けてきたことに、多くの商工業者が惹きつけられた結果ではないか。
写真の「長崎月桃茶」は、JR長崎駅前の「長崎県物産館」や大村市の「大村市観光案内所」でも販売されている。「皆様のお腹の健康維持に!」と描かれたパッケージの向こうから、1つの植物にかけたそして次世代の食生活を守ろうとする永田氏の叫びが聞こえてくる様に、筆者は思う。















