インターネットにおける商標の使用

インターネットにおける商標の使用

今回は、「インターネットにおける商標の使用」と題しまして、メタタグと検索連動型広告について述べたいと思います。
なお、本コラム中の意見にわたる部分は、すべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係ですので、ご注意いただきますようお願い致します。

1 メタタグ

1)メタタグとは
 メタタグとは、インターネットユーザーの目には見えないHTMLコードのことであり、ウェブページの文字コードや内容の要約(摘要、要点、抄録)、検索エンジンに対する要求、著作者、作成者、作成ソフト等の情報を記述するために利用するものをいいます。
メタタグがブラウザ上には表示されないという性質を利用して、例えば、競争相手のブランド名である登録商標を自己のウェブサイト内のメタタグに記載する場合があります。

 この場合、インターネットユーザーが検索エンジンに競争相手のブランド名を入れて検索をかけると、競争相手のブランド名をメタタグに組み込んだ自己のウェブサイトも一緒に検索結果に表示されることになります。

 その結果、競争相手のウェブサイトを探しているユーザーを自己のウェブサイトへと誘引できるようになり、自己の商品又はサービスを購入するように誘導することが可能となります。

(2)メタタグに対する考え方
 従来の議論では、メタタグに他人の登録商標が組み込まれていたとしても、その登録商標が、通常、ブラウザ上に視覚的に表示されないことから、商標の機能である出所表示機能を果たしているとはいえず、また、ユーザーもメタタグを表示として認識しているとはいえないことから商標的使用に該当するとは考えられていませんでした。
 しかし、他方、ブラウザの表示からソースの機能をクリックすればメタタグを実際に目で見ることが誰でも容易にできること、また、検索エンジンにキーワードを入力した際、検索エンジンを通じて視認しているといえなくもないことから、登録商標が視覚的に出所表示機能を果たし、メタタグに登録商標を組み込む行為が商標的使用に該当するという見解もありました。

(3)裁判例
 メタタグに関する裁判例としましては、「クルマ110番事件」(大阪地判平成17年12月8日。判タ1212号275頁。判時1934号109頁)があります。
この裁判例では、検索サイトにおいて表示されるウェブページの説明部分も、役務に関する広告であり、その説明部分が表示されるメタタグも、その役務に関する表示として、商標的使用に当たると判断し、商標権侵害を構成すると判示されております。

(4)米国の裁判例
 米国でも、以下の裁判例において、他人の登録商標を無断でメタタグに使用する行為について、商標権侵害を構成すると判示されております。
①Playboy Enterprises, Inc. v. Terri Welles、 7 F. Supp. 2d 1098(S.D. Cal. 1998).
②Brookfield Communications, Inc., v. West Coast Entertainment Corp.、 174 F. 3d. 1056 (9th Cir. April 22、 1999).

 その後も、③「North American Medical Corp. v. Axiom Worldwide, Inc.」事件(2008 WL 918411 (11th Cir. April 7, 2008))において、メタタグに商標を使用することが商標権侵害に該当すると判示されました。

 しかし、ほぼ同時期の裁判例である④「Standard Process Inc. v. Dr. Scott J. Banks」事件(Case No. 06-C-843 (E.D. Wis., April 18, 2008))におきましては、最新の検索エンジンのアルゴリズムでは、メタタグをほとんど考慮していないという実態が重視されて、商標権侵害が否定されました。

上記③及び④は、ほぼ同時期における裁判例ですが、結論が正反対になっております。
第一義的には、技術をどのように評価するかによって、結論に差異が生じたと考えられますが、その主張立証を行った代理人弁護士の立証活動の違いによって、このような結論の違いが導き出されたものと考えられます。

また、最新の検索エンジンのアルゴリズムでは、メタタグをほとんど考慮していないという実態からすると、今後、メタタグに関する商標権侵害については、具体的な事例によるものの、否定方向の結論になるものと考えられます。

2 検索連動型広告

(1)検索連動型広告とは
 GoogleやYahoo!等の検索エンジンにおいて、あるキーワードを入力して検索すると、検索結果が表示されるとともに、画面の端に広告が表示されることがあります。このような広告を検索連動型広告といいます。
 どのような単語をキーワードにするかは、広告主が決めることができますので、競業会社が、他社の登録商標をキーワードとして使用するということも考えられます。

 ただ、このような検索連動型広告におきましても、①広告主の広告自体に他社登録商標が使用されていない場合(単に検索キーワードだけを購入している場合)と、②広告主の広告に他社登録商標が使用されている場合とが考えられる。

(2)①広告主の広告自体に他社登録商標が使用されていない場合
ア 広告主の責任
 まず、①の場合、検索連動型広告として、他社登録商標のキーワードが検索されることによって、広告主の広告が掲載されることにはなるものの、他社登録商標を使用している訳ではないので、検索連動型広告における他社登録商標をキーワードとして選択する行為について、広告主の行為は、商標権侵害にはならないと考えられます。

イ 裁判例
 この場合に関する裁判例として、大阪地判平成19年9月13日(裁判所ウェブサイト)があり、同裁判例は、原告商品の名称及び原告商標をキーワードとして検索した検索結果ページに被告が広告を掲載していたが、検索結果の表示画面に表示される広告には原告商標を記載していなかったという事例について、被告の行為を商標の「使用」に該当しないと判示しています(ただし、原告側の立証がほとんどされていなかったという事情もあるようです。)。

(3)②広告主の広告に他社登録商標が使用されている場合
ア 広告主の責任
 他方、②の場合、広告自体に他社登録商標を使用しているため、商標権侵害を構成すると考えられます。

イ 検索連動型広告のサービス提供事業者の責任
 もっとも、広告主の行為が商標権侵害に当たる場合、検索連動型広告サービスを提供している事業者も責任を負うべきかが別途問題になります。
 この点につきましては、一般的には、サービス提供事業者に対して、広告主からのキーワード購入の申込みがあった場合、当該広告主の広告内容が他社登録商標を使用していないかどうかを、常時、確認させる義務を負わせることになるため、サービス事業者に対して過大な義務を負わせることとなり妥当ではないと考えられます。

 従いまして、広告主の行為が商標権侵害に当たる場合であっても、原則として、検索連動型広告のサービス提供事業者は、責任を負わないと考えられます。

ウ 欧州の裁判例
 この場合に関するものとして、フランスの最高裁判所にあたる破毀院が、Google が被告となった3件、具体的には、①Google France 対 Louis Vuitton Malletier事件、②Google France 対 Viaticum、 Luteciel 事件及び③Google France 対 CNRRH 事件について、欧州司法裁判所に対する先決問題の判断を求めた事案があります。
 そして、欧州司法裁判所は、平成22年(2010年)3月23日、広告主に対して、商標権侵害の成立の可能性を肯定しましたが、Googleに対しては、商標権侵害の成立を否定する判決を下しております(井奈波朋子「検索連動型広告に関する欧州司法裁判所2010年3月23日判決」AIPPI55巻7号2頁~13頁参照)。

3 まとめ

 インターネットにおいて、他社登録商標を広告等で使用することは、商標権侵害を構成することになりますが、メタタグとしての使用を行うことや、検索連動型広告においてキーワードを購入するだけであれば、原則として、商標権侵害を構成しないことになるものと考えられます。
 もっとも、上記のとおり、技術の進歩や検索アルゴリズムの変化によって、商標権侵害の該当性が変化しておりますので、あくまで上記の結論は、現時点でのものであり、今後、技術の進歩等によって結論が変わっていく可能性があることに注意する必要があります。

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山根 義則(やまね よしのり)

弁護士

1972年福岡県生まれ。1996年九州大学工学部情報工学科卒業。2006年弁護士登録。2007年九州大学大学院システム情報科学府情報工学専攻博士後期課程に飛び級入学。暗号理論と情報セキュリティの研究に従事し、その後弁護士となる。弁護士として、事業再生、M&A、税務訴訟、住民訴訟、知的財産コンサルティング等の案件を扱う。研究者としては、電子商取引、電子マネー等の情報セキュリティに関する研究に従事する。法律と技術との架け橋となること、クライアントのニーズに対して戦略的解決を図ることに注力している。

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