高度なマーケティングへのアプローチ~クリエイティブが伴って生きるもの~
マーケティングは資本主義経済社会の下、原則的に自由競争社会の中で必要な活動であり、それは科学的アプローチによるものである。では、マーケティングが万能なのか。そのメカニズムについて触れてみよう。
調査分析は科学
的確な現状実態の把握は、科学的アプローチによる調査分析によってなされる。もちろん、どの調査技法を使うのか、集計技法を如何に、その評価分析といった課題は、リサーチ経験に長けたマーケティングのエキスパートらの力量によって進めることができる。また今後将来の予測となると、科学的アプローチと洞察力の高いマンパワーの重なりによる考察によって、リサーチデータに裏打ちされた推論が導き出される。つまり、「分析・評価」においては、実態のデータという「事実」を精査した上に、リサーチャーや評価者の経験・見識による「思考」が付加されて提示されるものであるから、それに沿った戦略・戦術の成功の確率は高い。しかし、成功が確約されると言い切れるわけでもないから悩ましい。
靴が売れるか?
マーケティング・経営のセミナーなどで昔からよく使われる話で、聞いた人は多いと思う。未開の大陸に行った二人の靴の市場開拓マンの話がある。そこの原住民たちは全員靴を履いていなかった。一人の人間は、がっかりして本部に連絡した。「ここはだれも靴を履いていない。まったく売れる見込みはない」と。もう一人は興奮して本部に連絡し、「すごいっ!ここはだれも靴を履いていない。みんなに売れる!」と。
つまり、同じ「事実」を見て、マーケティングをどう見るかという「思考」は違っていて、どのような思考を持つかという話だ。
ほしいのは「壁の穴」
「壁の穴」の話もある。家の壁に絵を取り付けるため、壁に穴を開けようと思った人の話だ。店に行けば、ドリルの売り場には複数の種類のドリルがあり、結構な値段。販売員は「回転数がどう、先端がダイヤモンドで・・・性能、デザインがどうこうと・・・」。彼は頭を抱えた。ほしいのはドリルではなく、壁の穴。マーケティングの需要と供給という本質論を考えさせる逸話として使われる。ドリルを買うのではなく、別の道具かもしれないし、穴をあけるサービスがあるかもしれない、違う方法理論もあるかもしれないなど、商品・サービスを膨らませる思考トレーニングにもなる話だ。
コインの形は円?
こんな話もある。コインの形を書けと言われると、ほとんどの人は円形を書く。例外的に外国の変形コインを書く者もいるかもしれないが、一般には円だ。しかし、その円形コインは違う形も持っている。目が悪い人がジュースを自販機で買うのに探すコイン投入口の形。それは細長い長方形だ。これもコインの形だ。この例のように視点を変えることもマーケティング・クリエーションという観点では重要である。小生が行う研修の中で創造力を鍛える課題には、りんごを三等分する方法や、大きな川の両岸のA地点とB地点を最短時間で移動するための橋はどこに作るかといった問題を出し、発想、ひらめきの重要性を説いている。
■Q1.この川のどこに橋を架ければ、最短時間で到着できるか?
■Q2.リンゴを均等に三つに分ける方法は?
(注)答えは一つではなく、むしろたくさんアイデアがあることを理解させている。
柔軟な発想が必要
新しい経営戦略や行動計画を決定する際、10人の役員のうち、9人が賛成するなら、その反対を行ったほうが良いと言われることもある。つまり、誰もが考えるようなことは無難で陳腐なものであるから失敗の可能性が高いとする見方だ。また、リサーチ結果で1%のニーズがあれば、日本の人口のうち100万人のニーズがある可能性もあるという見方もある。科学的な調査によるデータと向き合って、次に行うべき経営判断や戦略策定、戦術計画には、柔軟な発想、豊かな創造力が必要となる。アイデアやそれを受容するマインドなども含め、マーケティング・クリエーションといわれる創造性だ。
これを推し進めるためにも、先ずは客観的事実を把握するためのデータが必要であることは言うまでもなく、的確なリサーチが仕事の入り口だ。
平成22年7月30日著















