私たちの身の回りにあるものはさまざまな技術開発がされて、日々進化したものが生まれています。
たとえば、多くの電気製品はマイクロチップが組み込まれ、コントロールがされています。これらの電子機器の進化を支えているのが、エンジニアによる技術開発。コックスは、太陽電池や無線技術などの技術開発に取り組まれている企業です。
―はじめに会社概要からお話いただけますか?
当社は、電子応用機器の企画や開発設計から製品化・製造を請け負っているのと、自社企画で開発した製品の販売を行っています。
直近の売上は約1億4000万円で、従業員は12名です。
業務分野としては、ホームページなどではソーラーエネルギー分野、光と明かり応用分野、センター分野、無線応用分野の、4つのカテゴリーに分けて掲載しています。ただ、実際には、それ以外の分野のご相談をいただくことも多いですね。

仕事の流れとしては、メーカー等からの開発依頼を受託して、それを製品化して量産体制にのせるところまでをワンストップで対応できます。
また、自社での企画・開発したオリジナル商品もあります。ただし、当社は工場はもっていませんので、製造自体はアウトソーシング、台湾などのメーカーに製造委託をしています。
オリジナル商品には、太陽電池を応用した道路鋲やサインマーカーなどの自発光型視線誘導灯や、CCFL蛍光灯、植物育成ユニットなどがあります。
売上構成はオリジナル商品と開発受託の比率で、だいたい3対7くらい。開発受託のウエイトが高いので売上変動が大きくて、初めの頃は銀行の担当者さんが売上変動の山と谷が大きいといって驚かれていましたよ。グラフにすると、のこぎりみたいですねって。今期は前期の売上をすでに上回ることが見えているので、山の方ですねって、また言われるかもしれませんね。
当社は、一言でいうと、エレクトロニクスの技術者集団。基本的に営業をしていないんで、営業職はいません。仕事の受注はメーカーの口コミや紹介が多いです。何か困ったことがあって、「コックスさん、これ、なんとかなりませんか?」で相談がくることも多いです。なので、時間がない、予算がない、のものも多いですよ。
でも、面白いことに、技術者っていうのはそういうのを何とかしようと夢中になるというか、技術者としての喜びがあるというか。頑張るものなんですよね。好きじゃないとできない仕事でしょうね。
―起業をなさったのは、何がキッカケですか?
私自身は、ずっと技術者でしてね。以前、大手電機メーカーで開発を19年やっていたんですが、もっといろいろと作りたい、自分でやりたいと思って始めたのがこの会社です。
辞めるときには、辞めたあともその会社を手伝うことが条件といわれまして、今も取引をさせていただいていますよ。会社をスタートしたのが平成元年の夏でしたから、もう20年を超えました。自分の会社の方が長くなりましたね。
ただ、事業の特性上、開発した製品を販売して、きちんと売り上げが上がっていかないと開発費用の回収ができませんから、資金面のコントロールは苦労もありますね。
資金面では取引先などからも出資していただいています。また、今後、どのような製品を開発すべきか?という意識も欠かせませんね。
―経営革新を申請されたのは、どのような内容ですか?
太陽電池を応用した道路鋲や縁石鋲などの自発光型誘導灯の製品開発と販売です。
太陽電池はアモルファスシリコン型を使用し、天気の悪い時でも充電できる全天候型になっています。
現在、よく使われている誘導灯は、エネルギーをためることができるタイプ、つまり「くいだめ」をするタイプですが、バッテリーの寿命が短いのが欠点です。
一方、うちで開発した誘導灯は「くいだめ」をしていない全天候型タイプで、コンデンサーが約30年もつようになっています。また、構造はポリカーボネイトの完全防水構造となっているので水没にも耐えて動作し続けることができます。
―経営革新計画を申請なさったのは、何か理由があったのでしょうか?
商工会議所さんから経営革新申請についてご紹介いただいて、制度を知りました。
ちょうど新製品を開発しようと考えていた時期だったので申請してみようと思ったんですよ。補助金などの制度もあると聞いたので、開発費用の一部でもまかなえればいいかと。
実際に取り組んでみると、計画申請の書類作成などの時間を考えると手がかかるなぁとは思いましたね。支援策は使いませんでした。
承認後は、経営革新の制度を知っている人からは「承認を取られたんですね」などと言われたこともあって、アピールの効果はあったように思います。
ただ、経営革新の申請のときには、開発製品の販売先を行政に・・・と考えて計画を立てていましたが、ちょっと流れが違ってきましたね。
今は、民間で売れるタイプに置き換えて販売をしています。そういう意味では、計画通りには進んでいないですね。
ターゲットを変更したのは、やっぱり民間に売る、民生品のほうが、いろいろな面で早いから。費用回収も早いし、物事が決まっていくのも早いですよね。
行政の場合、制度上、仕方がない面があるとことは理解していますが、比べるとやはり遅い。当社が動きの早いエレクトロニクス関連を行っているので、特に、そう感じるのかもしれませんね。
―先ほど、お話されていたCCFL蛍光灯とはどのような商品ですか?
蛍光灯の一種なんですが、ノートパソコンや液晶テレビなどのバックライトとして使われているCCFLという光源を使用した照明です。すでに、オフィス照明や工場などの天井灯、結婚式場のライトアップなどの導入実績があり、生産が追い付かない状況です。
開発は当社で行って、販売は北九州の豊光社さんにすべて任せています。「solana(ソラナ)」という製品名で販売しています。豊光社さんは先代の社長のときからの付き合いがある企業です。
ソラナの特徴は、明るく長寿命、省エネ、低発熱で低価格であること。寿命は一般蛍光灯の約6倍で4万時間。1日12時間の使用だと、10年以上交換不要です。消費電力も約40%オフですので省エネにもなります。
最近、あらたな照明として注目されているLEDとの比較では、LEDも一般蛍光灯と比較すると長寿命です。
ただし、LEDは熱によって寿命が劣化するので放熱対策が必要ですし、その分、コストが増える要因にもなっています。それに、光の放射性に違いがあって、LEDは一方向に強い光を放ちます。
CCFLは一般蛍光灯と同様に全方位に発光します。ですので、LEDは電飾やスポット照明向きで、CCFLは広範囲のエリア照明に向いているといえます。
また、LEDと比較するとかなり低価格なんですよ。メーカーにもよるんですが、国産LEDの40W型は1万~2万円。「ソラナ」は税抜価格4,980円の小売価格を設定しています。
ただし、「ソラナ」は、現在の蛍光灯の照明器具にそのまま取り付けることはできないので、配線替え工事が必要になります。導入時の初期投資が必要になりますが、コストシミュレーションをすると1~3年で回収可能となっています。長い目で見れば断然、得になりますよ。
―すごい照明なんですね。もっと高い価格でも売れるんじゃないかと思いますが、価格設定はどのように考えられたのですか?
カッコをつけた言い方かもしれませんが、高い価格設定では消費者のためにならない。オープン価格で出すと、利益をとるところ、利益をとれるところから価格を決めることになる。それだと、どんどん価格が高くなるし下がらないんですよ。
そうではなくて、あえて、メーカー希望小売価格を設定し、できるだけ低価格にして導入しやすいようにしたのです。やはり試して実感していただきたいですから。
それに、導入する側から考えると、どんなに省エネ、長持ち、といわれても、今使っている蛍光灯の価格との開きがありすぎると回収できないですよね。
―たしかに、そうですね。ところで、先ほど開発は好きじゃないとできない仕事とおっしゃっていましたが、人材採用や育成はどうなさっているのでしょうか?
新卒の採用としては、高専や大学の先生からの紹介というか、面倒みてやってよ、みたいな感じで採用することが多いですね。高専の子がバイトしたいとやってきて、そのまま、社員になったということもありましたけどね。中途入社については、ホームページには常時出しているので、応募してくる人がいる、って感じでしょうか。ハローワークからは少ないですね。
基本的に、技術者というのは専門職。特に、うちのように開発中心の企業は個々人の能力に依存している部分も大きいです。
ただし、能力は、結局のところ使ってみて、仕事をさせてみて、見きわめていくしかないんです。
開発というのは、できるまでやらなくてはいけないですし、好きじゃないとできない。もちろん、好きなだけでもダメでね。技術者というのはその点がはっきりしていますから、仕事をさせてみて、どうしてもダメな場合ははっきり伝えます。そうでないとお互いに不幸ですよ。早めに見極めがつけば、本人も別の選択があるわけですからね。
育成という点でいうと、課題のハードルを上げていくことでしょうね。課題や開発テーマに直面しないと頑張れないですし、何とかしようと取り組んでいるうちにできるようになっていく。それに、技術屋には、意外に教えたがる人が多いですね。
理由としては、技術屋としての自尊心みたいなもの、俺はこれだけ知っているぞというものと、後輩として面倒を見よう、という2通りがあるんだろうと思いますけど。
ただ、最近の人たちを見ていると、ちょっとかわいそうだなと思うこともあるんですよ。社内で見ているとわかるんですが、ひとりで悩んでいるんですね。
なぜ、ひとりで抱え込んで悩んでしまうかというと、人に聞く方法がわからないから。つまり、自分なりに物事を調べてわからない点を誰かに聞く、自分に必要なことを人から聞き出すことができない。そういう対応力が身についていないように思います。学校教育の問題もあるでしょうね。
あと、技術屋さんって、理系でコツコツ仕事をしているイメージがあるでしょう?これね、ある面ではあたっているけれど、必ずしもそうではないんですよね。
実際には、社交性というかコミュニケーション能力が必要なんですよ。お客さんの要望を聞き出すためには、話をしなきゃいけないし、そもそもお客さんが全部わかっているとは限らないんですね。特に専門的なものになるほど、相手の言葉が意味するところを理解しなきゃいけない。
自分が開発したものが製品になる、製品として世の中にでていく喜びというのは、技術屋ならではのものでしょうね。もちろん、開発者として名前が出るわけではなくても、自分にとっての大きな喜びなんですよ。それまでのキツさは吹き飛びますよ。
―さまざまな製品を開発されていらっしゃいますが、今後の目標は何でしょうか?

そうですね。やっぱり開発会社としては、CCFL照明を定着させたいですよね。
今は、工場などの業務用が主流なので、いずれは家庭用にも普及させたい。照明ということでいえば、植物育成ユニットを作っていて、植物工場などで使われています。植物の種類によって必要となる光の波長などが違うんですよ。そのノウハウなどを蓄積して、1次産業に関わっていきたい。生産者の収入アップにつながるようにしたいですよね。
プロジェクト・テーマとして考えている「3つのS」があるんですよ。Silver(老人)・School(子供)、Security(安全)の3つ。社会的には、どちらかと言えば弱者にあたる人たちをエレクトロニクスの応用で少しでもサポートできればと思っています。
Silverということでいえば医療関連の開発もやっているし、Securityでいえば、誘導灯などがありますね。あと、School、子供ということでいうと、母子家庭の人などが誇りをもって働ける場づくり、エレクトロニクスの応用で、安心して外に働きに出られるなども考えられるかなと。
話がそれますけど、連携、特に異業種連携って、最近、よく言うじゃないですか。これね、お互いが話をしただけでまとまるほど、簡単なものじゃないですよ。実際には、両方を知っている人がいないとまとまらない。ただ、現実としては、両方を知っていてコーディネートできる人材は少ないように感じますよね。
以前、大学医学部からの依頼で、無線技術を使ってデータをとるための開発を行ったんですが、最初は、医学部の先生方が望むものがよくつかめなくてね。で、何度も、先生のいう用語の意味は?とか、コミュニケーションをとりながら進めたんですよ。
実際にデータがとれると「うわぁ~、データが取れた!」となった。こういう技術の積み重ねが遠隔医療の可能性を開いてくれる。医療とエレクトロニクスが連携すると生まれるものがある。医工連携ですよね。
おそらく、こういうものって、医学だけじゃなくて、いろんな場面であると思うんですよ。そういう付加価値を高めるものを作っていきたいです。
薄利多売ではなく、付加価値の高いもの。そういう製品を開発できる会社として、お客さんが必要としてくれる会社でありたいですよ。
もちろん、最初に話したように、あちこち回ってコックスさん何とかして、と持ち込まれる案件のなかには、予算的にはかなりキツイものもあるんで、経営的に考えると・・・というものもあるんですよ。ま、だから、業績の山と谷が大きいのだけど。そういうなかで、お客さんからもなくなると困る会社と思ってもらえて、必要とされる会社であり続けたいと思っています。
【レポーターからのコメント】
お客さんが必要としてくれる会社、これが、コックスのいちばんの強みであると感じました。
開発に関する初めてのミーティングのときに、契約書をもって来られた企業もあったという話をされていました。
エレクトロニクスメーカーの開発は高額投資となるため、通常は、数回のミーティングののちに内容に合意したうえで契約するということですので、それほど、コックスさんの開発力、技術力への信頼が高いということなのでしょう。
廣瀬社長のお話を伺っていると、医療分野や農業分野など、知らないところでさまざまな技術が使われていることに気付かされました。ふだん、意識することがない技術は、多くの技術者の方々の努力によって実現されたものも多いのだろう・・・と、感じました。
レポーター:千葉 真弓(ちば まゆみ)
中小企業診断士
広告代理店、メーカーに勤務し、その後、中小企業診断士資格を取得。現在は、マーケティング戦略立案・小売業やメーカーの販売促進企画の支援・商品開発支援を専門分野として活動している。また、グリーンシート市場登録に従事した経験から、事業戦略立案、経営管理体制の構築等にも精通。中小企業診断士の受験機関で受験指導の講師を8年間経験している。- コックス(株)
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