労働基準法の改正1(法定割増賃金率の引き上げについて)
Q.当社は、正規従業員23名、パートタイマー55名の食料品小売を営む会社ですが、業務は年間を通じて繁閑の差が激しく、特に年末と年度末はかなり長時間労働を強いられ、時間外労働が月に80時間を超えることもあります。平成22年4月に労働基準法が改正され、割増賃金率が改定されると聞きましたが、具体的にはどのように変わるのでしょうか。
A.今回の労働基準法の改正は、本質的には、「ワーク・ライフ・バランス」の推進の流れの中から生まれてきました。その「ワーク・ライフ・バランス」は、「仕事と生活の調和」という意味であり、もともとは仕事と生活の両立を支援する取り組みとしてアメリカにおいて始まったのですが、わが国では、長時間労働の防止とメンタルヘルス対策を受け、「仕事のやり方をどのように変えれば期待する成果が上がりまた私生活も充実させることができるか」というテーマの解決に向けての取り組みを意味しています。
さて、お尋ねの件ですが、現行法では、1日8時間、1週40時間を超えて法定時間外労働をさせるためには、労働組合又は労働者代表との間で労使協定(以下「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。この協定締結の際には法定時間外労働には限度時間が設けられていて、変形労働時間制を採用する場合を除いて原則として1ヶ月の限度時間は45時間と定められています。この法定時間外労働の割増賃金率が25%以上になっていることは存知のことと思いますが、このたびの改正においてこの割増賃金率が、法定時間外労働が60時間を超えた場合と45時間超60時間以内の場合とで異なる割増賃金率を定める必要があるということです。
具体的に言いますと、まず、1ヵ月60時間を超える法定時間外労働についての割増賃金率が「50%以上」に変更されます。すなわち、1ヵ月60時間を超える法定時間外労働については5割増以上で計算した割増賃金を支払わなければならなくなります。ただ、この1ヵ月60時間を超える法定時間外労働の算定には法定休日(たとえば日曜日)に行った法定時間外労働は含まれませんが、それ以外の休日(たとえば土曜日、祝祭日等)に行った法定時間外労働については含まれるため実際の運用に関しては法定休日とそれ以外の休日を明確に峻別して労働時間管理をする必要があります。また、1ヵ月60時間を超える法定時間外労働が深夜(22:00~5:00)の時間帯に及んだ場合には、従来の深夜の割増賃金率(25%以上)と合わせて75%以上の割増賃金率で計算した割増賃金の支払いが必要になりますのでこの点も合わせて注意が必要です。
ただ、この措置については、当分の間一定規模以下の中小企業においては適用が猶予されることとなりました。具体的には「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」で中小企業に該当するか否かが判断されます(下表参照)が、御社は適用が猶予される企業ということになります。なぜなら、下表の資本金額又は労働者数のどちらかの規模以下であれば中小企業に該当することになるからです。また、「当分の間」は具体的な期間は明記されていませんが、労働時間の実態と社会情勢、景況感などを勘案して判断されるでしょう。

また、法定時間外労働が限度時間(1か月45時間)を超え60時間以内である場合には、現行の取扱いでは、「特別条項付の36協定」を締結する必要がありますが、割増賃金率については「25%以上」と定められています。それが平成22年4月以降はこの時間の割増賃金率については「25%を超える率」で割増賃金を計算するよう努めることとされました。今のところ、義務規定ではないのですが、36協定の届出においては、労使の話し合いの経過がわかるような協定の締結を求められることになりそうです。この努力規定には中小企業の適用の猶予はありませんが、対象になるのは平成22年4月以降の協定の締結及び更新であるため「駆け込み」の届出が増加しそうです。
いずれにしても、このたびの改正により、原則的には3種類の割増賃金率が設定されることとなるため、給与計算の際の法定時間外労働分の割増賃金の計算については一層煩雑になるため、対象になっている企業については早めの準備が必要になります。















