法務Q&A

中小企業金融円滑化法とリスケジュール

Q:当社は、急な資金繰りの悪化から、一時的に返済資金が不足するようになり、銀行への返済が思うようにできません。民事再生法の申請なども勧められたのですが、それ以前に、何とか銀行と交渉してリスケジュールなどに応じてもらえないかと考えています。
最近は、中小企業金融円滑化法ができて交渉がしやすくなったという話も聞きますが、実際のところは、どうなのでしょうか?

A:資金繰りが悪化して約定の支払い全てを期日通りできなくなった場合、いくつか対応する方法があります。

まずは、経営上の無駄を徹底的に切り詰めたり、収益性を改善するための方策を実施したりといった企業努力をすべきことはもちろんです。しかし、これについては、どうしても結果が出るまでに時間がかかることも多く、即時の経営改善効果を得ることは難しい場合が多いと言えます。

次に考えられるのは、リスケジュール等によって一時的に返済の負担を軽減してもらい、その間に経営を立て直すことです。

それでも難しい場合、弁護士に委任して債権カットや長期分割払い等を求める交渉を行う私的整理を行うことが考えられます。私的整理には、いわゆる「私的整理に関するガイドライン」に則った私的整理を行う場合と、これに必ずしも準拠せず柔軟な交渉を行う場合とがありますが、広い意味ではいずれも私的整理と呼ばれています。

さらにそれでも難しい場合は、民事再生、会社更生等の再成系の法的手続を利用することになります。

これらの再生系の手続は、いずれも事業の将来性が明確に描ける場合や、業績悪化の理由が明確であって短期的に改善が見込める場合などに利用されますが、必ずしもそうとは言い切れない場合は、最終的には破産や清算等の清算系の法的手続を利用することになります。

このうち、中小企業金融円滑化法は、最初のリスケジュールの交渉や私的整理において、非常に有効な道具となります。

この法律は、平成21年12月4日から施行された新しい法律で、中小企業の借入に関して、借り入れ条件の変更等の措置を円滑に行うべき努力義務を金融機関に課しているものです。つまり、金融機関は、中小企業から返済猶予などの申し出を受けた場合、無碍に断ってはならず、可能な限り条件変更等を受け入れる方向で検討をしなければならないということになったわけです。

なお、この法律は平成23年3月末日までの時限立法です。

もちろん、この義務は努力義務ですので、金融機関は、必ず条件変更に応じなければならないということではありません。ただ、現状では、金融機関は、「6カ月程度の元本の返済猶予」や「返済期間を延ばして月々の支払いを減額する」といった内容の条件変更であれば、暴力団とのつながりがある等といった特別な事情があるとか、経営改善の見込みが全くないというような場合でない限り、ほとんどこれに応じているのが実状です。

そして、この中小企業金融円滑化法に基づく条件変更がなされても、これはいわゆる不良債権としては扱われませんので、他の条件が整えば、新たな借り入れなども可能であり、以後の資金繰りに対する影響も最小限に抑えられるというメリットがあります。

ただし、この法律も、当面の資金不足をとりあえず先送りする制度ではありません。この猶予期間を生かして、経営改善等を図り、真の意味で経済的に立て直すことを目的としています。

したがって、この法律に基づく条件変更を利用する際は、単なる資金不足の先送りという視点ではなく、今後の資金計画や経営計画を合わせて検討する必要があります。また、これらの計画の見通し次第では、この法律に基づく対応を取るよりも、より根本的な対応(M&Aや事業再生、全体としての私的整理等)が必要な場合も十分にあり得るところです。

したがって、安易にこれらの法律を使って問題を先送りするのではなく、これらの法律の利用を検討する中で、全体の経営再建を、弁護士や会計士、税理士、中小企業診断士等のアドバイスも仰ぎながら、根本的に検討されることをお勧めいたします。

参考までに、中小企業金融円滑化法が使えるための要件を挙げておきますので、ご参考にされてください。

対象となる「中小企業」

  • 小売業の場合は資本金5,000万円以下又は従業員50人以下
  • 卸売業の場合は資本金1億円以下又は従業員100人以下
  • サービス業の場合は資本金5,000万円以下又は従業員100人以下
  • ゴム製品製造業(自動車又は航空用タイヤ及びチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く)の場合は資本金3億円以下又は従業員900人以下
  • ソフトウェア業又は情報処理サービス業の場合は資本金3億円以下又は従業員300人以下
  • 旅館業の場合は資本金5,000万円以下又は従業員200人以下
  • その他の業種(金融・保険業を除く。ただし、保険媒介代理業及び保険サービス業は対象となる)の場合は資本金3億円以下又は従業員300人以下
  • 医業を主たる事業とする法人(医療法人など)の場合は従業員300人以下
 

適用される金融機関

銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合、農林中央金庫など

金融機関の義務

  • 中小企業者又は住宅ローンの借り手から申込みがあった場合、できるだけ、貸付条件の変更など、債務弁済負担の軽減のための措置をとるよう努める。
  • 金融機関は、申込みがあった場合、他の金融機関、政府系金融機関(日本政策金融公庫など)、信用保証協会、中小企業再生支援協議会などの関係機関と連携を図りつつ、できるだけ適切な措置をとるよう努める。
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田中 雅敏(たなか まさとし)

弁護士・弁理士

1971年山口県生まれ。1994年慶応義塾大学総合政策学部卒業。1999年弁護士登録。2001年弁理士登録。弁護士知財ネット理事。アジア弁理士協会会員。弁護士としてベンチャー企業から上場企業まで幅広く企業活動関連業務を行う。特に、企業活動における総務、人事労務、法務等の組織作りや契約書等の経営インフラ作りに積極的に関与する他、知的財産権全般に関する業務を扱い、経営支援やコンサルティング業務も手掛ける。常に依頼者とともに、目的達成に必要な方法を能動的に模索・提案し、依頼者にとってベストな解決を図ることを目指している。

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