「新型インフルエンザの現状と対策」(2009/05/28開催)
2009年5月8日、アメリカ合衆国デトロイト経由で帰国した3 名について、新型インフルエンザウイルスが検出されました。いつ発生してもおかしくない新型インフルエンザの大流行(パンデミック)は、企業活動にも甚大な影響を与えるものであり、中小企業の事業継続経営や危機管理の観点からも喫緊の課題です。今、企業が何をするべきか、新型インフルエンザの予防対策、そして、大流行時の事業継続への取り組みについて解説いたします。
本文の後ろに添付資料がございます。印刷してご利用ください。
みなさんこんにちは。
博多区保健福祉センター(博多保健所)で健康課長をしております永野と申します。博多区におきます、新型インフルエンザ対策の担当をしておりますので今回お話をさせていただきます。
新型インフルエンザに関しましては、様々な報道や、行政からの情報提供などで、皆様十分ご存じのことかと思いますけれが、今回改めて、そもそも「インフルエンザ」がどういう病気なのか、そして今回の「新型インフルエンザ」の特徴は何か、そして現在どのような対策がとられているのかに関して、ご説明したいと思います。
すでに4月末よりこの新型インフルエンザに関しましては、様々な報道や、行政からの情報提供などで、皆様十分ご存じのことかと思いますけれが、今回改めて、そもそも「インフルエンザ」がどういう病気なのか、そして今回の「新型インフルエンザ」の特徴は何か、そして現在どのような対策がとられているのかに関して、ご説明したいと思います。
すでに「知ってるよ」ということが多数あるとは思いますが、この機会に知識の整理をしていただければと思っております。

さて、まず「インフルエンザ」とは何かというお話をいたします。インフルエンザはインフルエンザウィルスというウィルスによって起こる感染症です。インフルエンザウィルスには3つの型がございます。A型、B型、C型。C型は軽症のため、あまり話題になりまませんが、この3つのタイプがございます。新型インフルエンザは、このうちのA型でございます。B型は人にだけ感染するインフルエンザで、毎年の流行の最後近くにはやることが多く、5月の今でもぽつぽつと見られます。さて、このA型は人だけではなく、鳥や豚などにも感染する人畜共通感染症の側面を持っておりますので、これが新型のインフルエンザウィルスが出現する土壌になっております。毎年、人ではこのA型のインフルエンザの仲間であるA香港型、Aソ連型が冬を中心に流行しておりますが、実は、A型インフルエンザは、野生の水鳥が体の中に持っておりまして、この話もまた後でさせていただきます。

「季節性のインフルエンザ」という言葉を最近、特にこの新型が発生してから聞くようになったと思います。新型が出る前はわざわざいつものインフルエンザを季節性と修飾語を付けなかったのですが、新型ときちんと区別するためにも、「季節性」という言われ方をしております。実は「季節性」とは言っても、冬にだけインフルエンザが発生するのではありません。実はインフルエンザは1年を通して、A型、B型ともに出ておりますが、寒い季節に流行するために「季節性」という言い方をしております。型としては、良くご存じのAソ連型、A香港型、そしてB型、この3つがございます。
インフルエンザの流行状況を、どのように捉えているかというと、全国で定点観測というのを行っております。全国で約3,000、福岡県内では198のインフルエンザ定点医療機関が決まっております。福岡市内で約50ヶ所があり、そこがインフルエンザの患者を診察した場合、その情報が報告されて流行の状況を把握するということになります。

少し見にくいかもしれませんが、このグラフは、2005年から2009年までの流行状況を表しております。12月の終わり、年末ぐらいら少し患者が出始めて、1月、2月、3月、この辺りで流行のピークがきます。その年によって、1月にピークがある年もあれば、3月終わりくらいに、結構暖かくなってからピークがくるような年もございます。2007年は3月の終わりの方にインフルエンザが流行しております。今年の冬は1月の初めくらいに一つ山があって少し減ったところに、また3月の終わりに少し山があって、今はずっと少なくなっている状況です。最初の山ではA型が多く、後の山ではB型が多いような状況で、このように流行の状況を見ています。
こう見てみますと、決して夏に全部なくなるわけではなくて、ぽつんぽつんと続いて行くということをご理解ください。

さて、では「新型インフルエンザ」とはどういうものかです。最初に申しました全てのA型インフルエンザは、実は鳥由来です。野生の水鳥のお腹の中には既にいろいろなタイプのA型インフルエンザがございます。普通は種の壁というのがあり、他の動物のインフルエンザはそう簡単に他の動物にうつるものではありません。鳥のインフルエンザも、野生の鳥からすぐに人間にうつるというわけではないのですが、非常に濃厚な接触があると、種の壁を飛び越えて他の種(動物)にインフルエンザウィルスがうつっていくことがあります。それでは、新型インフルエンザはどのように発生するのでしょうか。

まず野生の水鳥からニワトリなどの家禽類にうつって、水鳥は実はほとんど(インフルエンザ)の症状が出ないのですが、それがニワトリにうつってしまうと、場合によっては非常に強い病原性を示す場合があります。これがH5N1高病原性鳥インフルエンザです。もし、このとても強い病原性のウイルスが人間にそのままの病原性でうつり、且つ人から人にうつるようになったら、とても大変なことになるので、全世界的に準備を進めていたところです。ここの絵(資料)のまん中に豚の絵がございます。豚は人のインフルエンザ、あるいは鳥のインフルエンザ、たとえ種の壁があるにしても、割とどちらもうつりやすい動物です。そして、豚の中で色々なウィルスが混ざり合って、新しいウイルスが出現するのではないかと、元々いわれておりました。

実は季節性インフルエンザと言われるものも、元々は新型インフルエンザだったのです。1918年、第一次世界大戦の頃に流行した、よく言われるスペイン風邪は、今回の新型と同じH1N1というタイプで、全世界に猛威をふるいました。そしてだんだん病原性が弱くなって、季節性のインフルエンザとして流行を繰り返します。それが40年くらい続きます。そして1957年には新しいタイプのH2N2というアジア風邪と呼ばれる新型インフルエンザが流行り、それが普通の季節性インフルエンザとなる。それから10年経って今度はA香港型が発生し、今は普通の季節性インフルエンザになっています。
そして今年2009年、新しいH1N1が出てきた状況です。この香港型が出てから既に約40年経っているので、そろそろ新型が出るのではないか、それも濃厚接触の人に感染が見られ始めた高病原性鳥インフルエンザが新型に変わるのでは、と言われていたのが、今回の新型インフルエンザが発生する前の状況でした。

さて、では今回の新型インフルエンザはどのような特徴についてお話しします。
今回の特徴は、(資料は見えないと思いますので読み上げますね)、3月の中旬くらいから、メキシコでインフルエンザ様の疾患が流行しているという状況がありました。そして4月25日に、豚インフルエンザに関する第1回目のWHOの緊急会議がございまして、同時に厚生労働省でも注意喚起を行いました。そして2日後、WHOはこのインフルエンザに対する警戒レベル=フェーズといいますが、このフェーズを3から4に上げ、厚生労働省は新型インフルエンザの発生を宣言し、日本における段階としては海外発生期となりました。ちょうど1か月ほど前のことです。4月29日はさらにフェーズが5に上がり、5月8日には日本においてアメリカから帰国された方の新型インフルエンザの感染が確認されました。そして5月16日には、神戸で海外渡航歴のない国内の新型インフルエンザ感染者が確認され、国内では、国内対策の段階として国内発生早期という段階に移りました。もともと新型インフルエンザの発生に関しては、今回の新型発生前から「このような形で行動しましょう」という計画がありましたので、それに沿って日本中が動いていたのですが、今回の新型インフルエンザの病気の特徴(後で申しますけれども)が、基本的に軽症であることを考慮して先週22日から、対策の一部が変わっております。昨日の時点では、国内発生が352例、検疫対象で発症した方が8例で、合計360例の新型インフルエンザの発生となっております。
世界的にみると、アメリカ、メキシコ、カナダに次ぐ患者数になっているという状況です。世界的には13,398名、死亡が98名という報告になっております。ほぼ世界中で患者の発生を見ておりますが、地域的に特に拡がっているというのは、アメリカ、カナダ、メキシコということでございます。
患者が多いアメリカやメキシコで、患者の状況報告(レポート)がいくつか出ておりますのでそれを見ますと、日本の状況と同じで、若い方が多く、60歳以上はあまりいらっしゃいません。アメリカやメキシコも、特に15歳から29歳までの方がとても多くなっております。これもそうですね。
アメリカの患者さんでの症状は、これもほとんど普通のインフルエンザの症状と変わらず、9割以上の方に熱発が起き、咳、のどの痛みがあります。通常のインフルエンザと少し違うのが、患者の4分の1くらいに、嘔吐下痢といった消化器症状が出ております。
メキシコの患者さんの症状もほぼ同様ですが、メキシコからの報告には消化器症状の記載はありませんでした。消化器症状を起こしていない、ということではないと思います。
大阪の中学・高校生の症状ですが、ほとんど軽症で、普通のインフルエンザの症状と同じでありました。アメリカの症状と同様に日本でも1割くらいの方に下痢や嘔吐などの症状がございました。

アメリカでの報告では、入院が必要な重い症状の方は、もともと喘息や心臓の病気があったようです。また、死亡した92名を見てみますと、やはり、基礎疾患のある方が多く、妊婦も1名亡くなっていらっしゃいます。妊婦でありかつ喘息のような基礎疾患もあるといった方は注意が必要なようです。

これは何のグラフかと申しますと、アメリカでのインフルエンザウィルスの検査結果を示すグラフです。新型のみではなくインフルエンザすべてを対象にしています。先ほどの福岡の流行状況と同じで、この辺りが1月や2月ですが、こういう時期にインフルエンザウィルスの検査を行うと陽性が多いです。そして、だんだん減ってきます。
ところがこの4月終わりくらいから、検査数もぐっと増えてくる中で、(グラフのこの部分を拡大してありますが)、この部分の上の方に新型が検出されているという状況です。4月の検査の全てが新型というわけではなく、B型もA香港型もAソ連型もあります。新型の流行により検査数自体が増加していますが、その結果を見ると、春先・初夏でもB型もA香港もAソ連もある程度検出されるのだという事を、このデータを見て再認識しました。この検査も、今はピークを過ぎて減ってきているようです。
次のグラフですが、これもアメリカからの報告ですが、病院に外来の患者さんとして来る人の中で、インフルエンザのような症状を示す人がどのくらいいるかということを示したものです。先ほどと同じように、2月・3月は多く、外来患者さんの3%くらいが、インフルエンザ様の症状の患者さんです。その後、その割合が下がってきていたものの、この新型の発生で少し増えています。ここに示したレポートの、次の週のレポートでは既に外来患者に占めるインフルエンザ様症状の患者割合も少し下がっておりましたので、アメリカでのピークは過ぎたのかなと思います。ピークと言いましても、実は冬に病院にかかられる患者さんに占めるインフルエンザの患者さん割合よりも、この4~5月での割合は少ないので、いつものインフルエンザの患者数をはるかに超える患者が病院におしかけるような状況ではないようです。全体でみると、冬場ほどインフルエンザが流行っているという状況ではありません。
さて、厚生労働省がまとめた今回のインフルエンザの特徴をここに挙げております。症状は通常の季節性インフルエンザとほとんど同様です。潜伏期は1日から7日、長くて7日です。大体は2日くらいです。病原性は低く、抗インフルエンザウィルス薬が効き、季節性のインフルエンザと同様に感染力は強いということです。慢性疾患を有する人を中心に重症化した方もいらっしゃいますが、日本では重症の方はいらっしゃいません。

もう一度このグラフを出しますが、これは福岡県におけるインフルエンザの流行の状況です。福岡市では50か所くらいのインフルエンザをサーベイランスしている定点医療機関がありますが、そこでA型インフルエンザと診断されたら、詳しい病原体検査を行うようにサーベイランスを強化しています。福岡市において、このサーベイランスで新型インフルエンザウイルスは検出されておりません。

日本における対策ですが、発生段階の区分は、お手元の次の方の資料にありますが、今は国内発生早期という段階です。もともと発生段階に合わせて方針が決まっておりました。
まず、海外発生期では検疫強化が行われました。検疫官が飛行機に乗り込み、機内検疫を行う。これらの状況はニュースなどでご覧になったと思います。もし感染者がいた場合は感染者を隔離入院させるとともに、回りにいた方は停留という措置がとられていましたが、22日に方針が変更されたことによって、今現在その停留という措置はなくなっております。機内検疫も、事前にインフルエンザ様症状の方がいらっしゃる時だけという形に変わってきております。当初は、アメリカやメキシコ、カナダから着いた飛行機はすべて機内検疫を行ってきたのですが、今少し緩和されております。
次に、現在行っていることですが、発熱相談センターというものが、各区の保健福祉センターに設置されています。そして発熱外来という、新型インフルエンザを疑われる状況の人を診察する専用の外来が設置されております。
福岡市内におきましては、福岡市立こども病院感染症センターと福岡市民病院に設置されております。今までに約100人以上の方を発熱外来で診ていただいておりますけれども、新型インフルエンザの方はいらっしゃいません。この国内発生早期では、新型インフルエンザの症状があり、患者との接触歴があるような方に関しては、必ず発熱相談センターに電話をしてもらい、発熱外来を受診して、もし新型インフルエンザ陽性となれば、すべての患者が指定された医療機関に入院することになっております。福岡市においてはまだこのケースはありません。新型インフルエンザの症状があって、たとえば阪神地域、神戸や大阪に旅行をされたとか、アメリカやメキシコから戻ってきたばかりです、という方に関しては必ず発熱相談センターに電話をしていただき、発熱相談センターの方から発熱外来の予約をし、そこで受診していただくということになっておりますし、そこで新型インフルエンザが疑われ、ウイルスの検査で新型が陽性だったという場合は、感染症センターに入院していただくことに今はなっております。
日本はまだ蔓延期ではありませんが、日本中が蔓延期になった場合は、新型インフルエンザの症状を有する方は、もちろん発熱相談センターに電話をし、発熱外来を受診する、ここまでは国内発生早期と同じですが、診察のあと、症状が重い人だけが入院、軽い人は自宅待機ということになっていました。5月22日の方針の修正により、蔓延期になってこのような体制をとるのではなく、地域の実情に合わせて、新型インフルエンザの患者全員が入院する方針と、重症の人だけが入院する対応を地域の状況によって判断することになりました。今、神戸や大阪でしたら、皆さんほとんど軽症なので自宅療養という形になっていますが、福岡市で患者さんが確認されれば、その人が軽症でも入院することになります。地域の実情に合わせた対策を行うという点が、今回の22日以後変更されたことです。
では具体的に感染防止の為に、どうすればよいかをお話しいたします。普通のインフルエンザの感染防止と新型インフルエンザの感染防止と、何の違いもありません。臨床症状もほぼ同じですし、新型特有の防止策があるわけではありません。まず、インフルエンザがどのようにうつるのかを確認いたしましょう。
まずここにインフルエンザの患者さんがいらっしゃいます。この人が咳をするとその飛沫が飛び散って、だいたい1メートルから2メートルの範囲にいる、健康な人の口や鼻に入り、感染する。これが飛沫感染です。もう一つが、接触感染です。これは感染者の人がゴホゴホ咳をしたりすると、ウィルスがその人の手や周りの物に付き、特にその手がトイレのノブやスイッチや色々なところを触り、その触ったところに他の感染していない人が触ってしまい、その手を自分の鼻や口に持って行き感染してしまう。これが接触感染です。この飛沫感染と接触感染をどのように防いでいくかということがポイントになります。

感染防止対策は、感染した人への対策、感染経路の遮断、まだ感染していない人への対策と、大きく3つに分けられます。感染した人に対する対策としては早期発見・早期治療が大事です。症状のある方で神戸、大阪やアメリカ、カナダ等から戻って間もない方はすぐに発熱相談センターにお電話くださいというのは、この目的のためです。そして発熱外来に行き、新型インフルエンザ陽性となった場合はすぐに治療です。これは地域によって異なりますが、必要となれば隔離入院となります。
また、特に大事なことが「咳エチケット」です。新型インフルエンザだけでなく季節性インフルエンザや結核・風邪など、呼吸器感染症、咳でうつる病気に関しては、咳をしている人がその飛沫を散らさないということが一番大事です。「マスクをしましょう」というのはよく感染防止対策でいわれますが、これは誰がマスクをしなければならないかといる指摘が結構抜けていることが多く、咳が出ている人がマスクをしなければなりません。ですから、「咳が出ている人はマスクをしましょう」というのが正しい対策です。繰り返しますが、「咳エチケット」が非常に大切な対策になります。咳が出るとき、必ずマスクを持っているわけではないので、咳をするときはティッシュなどで口と鼻を押さえて、回りの人から顔をそむけて咳をしましょうということです。使用したティッシュなどはすぐに蓋付のごみ箱に捨てましょう。ずっと咳が出ているような人は、人込みに出てきてほしくないし、そういう人は早めに治療をし、職場には行かないということが大切です。もちろんそういった際に病院に行く時は正しくマスクをつけましょう。これが「咳エチケット」です。

次の感染予防は、感染経路である、飛沫感染・接触感染を防ぐ方法です。まず接触感染の予防ですが、「手洗いをしましょう」というのはこの接触感染の予防になります。報道等で、インフルエンザの予防で「マスクしましょう」「手を洗いましょう」とよく言っていますが、「何のために」マスクをし、手を洗うのかということを押さえて、行っていただければと思います。特に、スイッチやトイレのノブなど人がよく手を触れる場所を触って、そのまま食事をしたり、鼻をいじったりすると、そこから感染してしまいます。だから手を良く洗いましょうということになります。ご存じだと思いますが、手から皮膚を通してインフルエンザウイルスが進入するわけではありません。もう一つは、四六時中手を洗っているわけにはいきませんので、口と鼻をやたらと触るのをやめるというのも大事なことです。あとは人がよく触るトイレのドアノブなどはきちんと掃除をしましょう。これは先日清掃会社の方から聞かれましたが、普通の水と洗剤で丁寧に掃除をするのが一番良いと思います。あまり薬剤に頼りすぎたり、アルコールを吹きかけたらそれで良いということではなく、丁寧に掃除をするということが大事です。次に飛沫感染の予防ですが、これは何といっても「咳エチケット」ですが、自分の自衛のためには咳をしている人からはちょっと離れる。あとは蔓延期では、換気が不十分な閉鎖空間、たとえばラッシュアワーで込んでいる電車の中などですが、自分に咳が出ていなくてもマスクを使用することも必要かと思います。あとは、人込みを避ける、換気を良くするというようなことですが、基本的にはマスクそのものは、他の人からの感染を完全に防ぐということはできません。マスクは、自分が他人にうつさないためだと考えて下さい。

次に感染予防の3番目、うつされる人についての対策です。基本的な健康管理をすることと、予防接種が大切です。しかし、新型インフルエンザの予防接種は、今はまだないことは皆さんご存じだと思います。これは将来の話です。ですから、基本的な健康管理が大事です。今回、糖尿病や喘息といった病気を持っている人は重くなりやすいという話があります。これは新型だけではなく、普通のインフルエンザでも同じです。このような持病のある方は、まず持病のコントロールをきちんと行うことがとても大切になります。もちろん、有効なワクチンが出たら、きちんと接種を受けていくことも大切です。

ワクチンに関しては、新型に対応するワクチンがいつ頃接種可能になるかということはまだ分かりません。季節性の普通のインフルエンザの予防接種というのは、10月から始まります。自治体によって異なりますが、高齢の方には自治体からの補助がある場合もございます。福岡市は補助を行っておりますので、是非お受けください。

地域での感染予防をどうするかということで、今回の新型インフルエンザはそれほど重くないということが解ってまいりましたので、一律に事業の自粛を要請するような方針はなくなりました。大阪や神戸では、まだ国の対策が変更される前に沢山患者が出たので、元々とても重いH5N1という強毒性のウイルスが新型インフルエンザになって流行ることを想定した対策、つまり一人でも患者が出たらその地域を休校にしたり、集会をやめたりという方針でしたので、大阪や神戸では休校などが行われました。

しかし実情に合わせた方針に変更されましたので、事業や集会等を一律に自粛要請することはありません。しかし、感染機会を減らす工夫はしてください。例えば、体調が不良だったり、発熱がある人が集会に参加したりスポーツを観戦したりすることはやめてください、ということになっています。これは本来、さまざまな感染症防止の面から、集会等で感染症を疑う症状、熱や咳がある人は参加を遠慮していただくということは、重要なことで、今だけ行うことではありません。学校に関しては、地域で一斉に休校しましょうという対策を、状況に合わせて判断しようと変更されました。季節性のインフルエンザでも毎年学級閉鎖等ございますが、それとほぼ同様な対策になります。
では、なぜもともとの対策方針が、地域で一斉に集会の自粛、休校等を行うようになっていたのかというお話をさせていただきます。元々の計画ではとても重症のインフルエンザを考えていたということを先ほど申しまた。もし致死率がとても感染症が流行したら、早めに対策をとらなければ大変沢山の被害が出てしまいます。感染のピークをできるだけ先に延ばせば、その間にさまざまな対策が可能となり、被害の総量も減らせるからです。

これはスペイン風邪の時の対策で、都市によってその対策の違いによって、被害が随分違ったことからなのです。1918年フィラデルフィアにおいては、このスペイン風邪に対して全く対策をとらなかった結果、かなりの方が亡くなってしまいました。ここに人口10万人当たりの死亡率が書いてありますが、多くの方が亡くなりました。ところがセントルイスというアメリカの町では集会をやめるといった対策を行ったため、被害を抑えることができたのです。よって、重症の感染症が流行する場合には、地域での対策を強化しましょうという方針になっていましたけれども、今回の場合は、一斉休業などまでする必要はなさそうだということが分かってきております。
事業所における対策は、後半の講義になりますが、新型インフルエンザが流行ろうとそうでなかろうと、是非工夫をしていただきたいのは、従業員の健康管理です。体調が悪い方が休みやすい環境を常日頃から作っていただければ、保健を担当するものとしてありがたいなと思います。うつる病気はインフルエンザだけではありません。たとえば結核のような病気も咳をしながらその方がずっと従事していたために、事業所内で感染者がたくさん出てしまった事もありますので、是非体調の悪い方は休んでしっかり療養するような体制を作っていただければと思います。もちろん、今の時期でしたら、発熱症状があり、福岡の場合でしたら、関西方面、外国に行かれた方に関しては発熱相談センターへの連絡に関して、ご紹介していただければと思います。また、蔓延期では公共交通機関の利用を避けるための工夫なども必要かと思います。このあたりも今のうちに考えておかれるとよいかと思います。あとは基本的な感染対策ですね。これは先ほど申し上げたところです。

これは最後のスライドになりますけれども、実は私が今日ここで一番お伝えしたいことは、感染症の予防というのは、インフルエンザだけではないということです。夏場になりますと、食中毒が増えてきます。全てではありませんが、食中毒も感染症の一部です。結核であるとか腸管出血性大腸菌O157であるとか、冬場ではノロウィルスなど、いろいろな感染症があります。すべての感染症を完全に防ぐことは不可能ですけれども、感染の可能性を下げるということは可能です。それは、先ほど説明した絵で、ここに患者さんがいて他の健康な人がいて、感染経路がありましたね。感染の対策というのは、その患者さんへの対策、その感染経路への対策、そしてうつる側への対策、この3つを全て行うことです。一つだけで十分なことはありません、3つを組み合わせてより感染の可能性を下げるということが大事です。そしてもうひとつ、それは持続可能であることがとても大事です。この新型インフルエンザのニュースが伝わってくるときだけ、咳が出ている人は休んでもらい、新型インフルエンザの話が聞こえなくなったら、従業員に熱があってもがんばって働きにきてもらうということではダメです。感染予防対策は持続可能であることが大事です。自分たちが常日頃行っている衛生管理や基本的な感染症予防対策をいつでも続けていく、そして今回の新型インフルエンザ発生を、その訓練をする機会にしていただければと思います。感染予防策を、習慣にしていただきたいことです。先ほど申し上げた通り、感染源対策では、体調不良の従業員は早く休んでもらう、丁寧に掃除をする、咳エチケット、手洗い、基本的なことを習慣にするということです。感染症は色々あります。食品からうつるものもあれば、動物からうつるものもありますので、そういうものに適切に対応すること、そして感染経路を遮断するために衛生的な環境をつくり、手洗い等をキチンとすること。もう一つは、うつる側(患者さんがいて、うつる側、こちら側ですね)は、ワクチンで防げる病気は、ワクチンを接種しましょう。そして何といっても病原体が体に入っても発病しにくい、重症化しにくい体を作る事も大事です。それには個人の免疫力が大きく絡んできます。保健所はメタボ対策なども行っておりますが、基本的な健康づくり、食事や運動、休養に気を配ることも免疫力アップに効いてきますので、基本的な感染病対策、衛生的な環境、そして健康づくりを合わせて考えていただければ、ありがたいと思います。

最後に一つ付け加えて、手元に「新型インフルエンザに備えましょう」というパンフレットをお配りしております。ちょっと見てください。これは新型が発生してから作ったものではありません。これは新型が出る前に、いつ来るかわからないけれども備えましょうという時に作ったパンフレットです。今回の分とは少し異なる内容もあります。免疫がないために大流行と書いてあり、これは今回の分と同じです。重症化と書いてありますが、これは今回の分とは少し異なります。その次に、いつ発生するか予測は不可能と書かれておりますが、すでに新型が発生しておりますので、ここも話が違います。短期間で世界的な大流行にと書かれておりますが、今回のケースではまだWHOはパンデミックという言い方はしておりませんので、今回は世界的大流行の一歩手前ということになります。ここには「わずか1週間程度でパンデミックになります」と書いてありますが、現状とは若干異なる表現があると理解してください。
ページをめくっていただくと、基本的な対策のことが書いてあります。マスクに関しては咳やクシャミがある人はマスクをしましょうということが書いてあります。手洗いのことが書いてあります。あと、大流行の備えということで、不要不急の外出ができなくなるかもしれないので、食糧や水は備蓄しましょうということが書いてございます。今回のインフルエンザでは外出を自粛するようなことはないのですが、これは災害対策としても大切なことなので、水や食料の備蓄をしなくてもよいということではありません。今急いでこの新型インフルエンザのために買いだめに走る必要はないのですが、災害等でもとても役に立つことですので、少しずつそろえていただければと思います。
あと、まん中あたりに、正確な情報を入手しましょうというのもあります。これは大事ですね。外出はできるだけ避けてくださいと書いてありますが、これはとても重症のインフルエンザが流行ったときの対応で、今回はこういうことではありません。右側に発熱相談センターに相談しましょうというのが書かれていますが、これはその通りです。あと、不要不急の受診は控え・・と書いてありますが、もともと不要の受診は控えてほしいと思います。症状が重ければ受診をすることは構いませんが、不要の受診は大流行がおきなくても受診しなくていいです。あとは自宅療養、二次感染に注意というところも同じですね。まん中に外出はできるだけ避けてくださいというところに、小さな文字で、国のガイドラインでは都道府県内で新型インフルエンザの患者が一人でも発生した場合、その都道府県内の学校や幼稚園は一斉休校することになっています、と書かれておりますが、これはしないことになりました。この前福岡県でも患者が一人発生し、以前の対策では一斉休校になりますが、方針が変わっておりますので、休校にはなっておりません。あといくつか書いてございますが参考になさってください。
感染防止のことや、どのようなものを備蓄するかは、変更されているものはありませんので、このまま使用していただければと思います。これを事業所に持って帰られてそのまま渡されると、「一人でも出たら休校かしら」と慌てられるかもしれないので、少し補足させていただきました。
最後に、すべての感染症を防ぐことは不可能ですが、基本的な対策を行い、感染のリスクを下げていただきたいと思っております。
簡単な話ではありますが、これで終了させていただきます。
(司会)
どうもありがとうございました。ここで、長野先生の講演を聞かれまして、ご質問のある方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。
(質問者1)
長野課長にお伺いしたい。テレビなどで病院の担当の方がゴーグルを着けて対応してらっしゃいます。さきほどの渡邊さんの講演の資料の中にもゴーグルという文言が出てきましたけれども、接触それから飛沫感染において、目の粘膜からの感染があり得るのかということが一つ。もう一つは、私どもは季節性のインフルエンザというのは、乾燥した低温の状態でウイルスが蔓延するというようなイメージがあったんですけれど、今回はメキシコから、それから日本でも現在ではあまり増えていないと思いますけども、そういった今のインフルエンザと気温の関係について何か情報はあるんでしょうか。例えば気温が高ければこの程度で終わっているけれども、世界の冬の状況、冬の季節である国では感染が爆発的に多くなっているとか、そういう情報が他にもあるんでしょうか。その二点をお伺いしたいと思います。
(永野)
まず、目の粘膜からの感染ですけれども、粘膜ですので感染がないとは言えませんが、明確には分かっていません。医療従事者がゴーグルを着けて診察をしているのは、あれは例えば診察をする時に喉を大きく開けたり、あるいは喉の奥からウィルスを検査するために検体を取ったりします。そうするとかなり咳きこんだりして、直接その患者さんと1メートルどころかすごく接して対応するので、感染のリスクが高いため着けていると考えてください。最初あのような形で、例えば検疫官にしても発熱外来の医師にしてもゴーグルをしておりましたのは、ウイルスの毒性などの性質がまだ分かっていなかったからです。アメリカやメキシコでのからの情報はある程度あっても、日本人に感染した時に時にどうなるのかとか、そういうことはある程度患者さんが出てみないと分かりません。そういうことで、最初はやはり完全装備で当たるという形になります。発熱外来で対応する先生がウイルスに感染してしまうと、外来が成り立ちませんので、そこはきちんとした防御策を取って対応します。ただそれが、ゴーグルが今回の新型インフルエンザウィルスで、家庭や職場でゴーグルなどの備えが必要かと言いますと、それは必要ないと思っております。病院などでは、医療行為の中身によりゴーグルの必要があります。今後ウイルスの性状が詳しく分かるにつれて、医療機関での対応も柔軟な変化をしていくような形になると思います。
次に、一般的にインフルエンザのウィルスは冬に感染しやすくなります。今回のウィルスがどうなのかはまだ分からないと思います。ただ、今は南半球が冬ですが、南半球で爆発的に増えているという感じでは今のところはありません。ですので、まだ何とも分かりません。一般的にはインフルエンザウィルスは冬に広がります。ですので、この秋から冬にかけて今回のウィルスの感染が増えるという予測はもちろんされていますけれども、確証はありません。ちょっと分かりにくい説明でごめんなさい。一般的なインフルエンザと多分同じだろうと思っているんですけど、冬に広がるという確証がまだ得られているわけではないということです。
添付資料(印刷用にご利用ください)
- 20090528report.pdf (1.5 MB)
講師:長野 美紀(ながの みき)
福岡市博多区保健福祉センター健康課 健康課長
- 日時・場所
2009年5月28日(木)
13:30~15:30福岡商工会議所502号室
博多区博多駅前2-9-28
TEL 092-441-2161















